35歳でスキルス胃がんになった。その後。

結婚後、不妊に悩み、病院での治療を決心した矢先、35歳でスキルス胃がんになりました。TS-1の副作用により涙道が閉鎖し、常に涙が目からあふれ出ている状態です。

胆管がんから生還した男性との出会い

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待合室に戻り、すぐに夫に連絡をしたあとは、半年後のCT検査の予約をするため、看護師に名前を呼ばれるのを待っていた。

いつもは5分ほどで呼ばれるのに、今日は時間がかかる。
早く帰りたい気持ちをどうにか押さえて、スマホをいじりながら時間をつぶしていた。

ようやく看護師に名前を呼ばれ、予約票に記入をするように指示された。
「5分後にまた来ますから」と言って、看護師は立ち去り、私は席で予約票の空欄を埋める作業に入った。

そのときのことである。
隣に座っていた男性にふいに話かけられた。

隣に座っていた男性との出会い


「あなたもY先生なんですね」

病院で他の患者さんに話しかけられることなど今までなかったので、かなり驚いて顔を上げると、60歳代くらいの白髪の男性が私の方を向いていた。
『なんで私の担当医がY先生なのかわかったんだろう』と一瞬不思議に思ったが、すぐに予約票にY先生の名前が書いてあることに気づく。

(心の声)あっ、予約票をチラ見されたんだな…

その男性はさらに話し続けた。

「私はね、5年前に胆管がんをやったんです。65歳のときにね。そのとき、肝臓もほとんど取ってしまってね。最初は手術ができるかどうかわからなくて、生存率は0.3%と言われて、もうこれは終わりだなと覚悟したんですけどね。Y先生に手術してもらってね。なんとか今も生きてるんです」と一気に話した。

胆管がんからの生還


胆管がん…
詳しくは知らないけれど、すい臓がんとともに、初期の段階でかなり発見が難しく、予後も悪いと聞いている。
確か、川島なお美さんもこのがんだったはず…
でも、目の前にいる男性はそんな大きな病を経験したとは思えないくらい、顔色も良く、程よい肉付きで健康そうだ。


男性:65年間ね、私は大きな病気ひとつしたことなかったんです。毎年、健康診断もしてね。全く問題がなかったんだけど、そのときだけ肝臓の数値が異常だということで大きな病院で検査をしたら、がんが見つかったんですよ。

<65年間ね、私は大きな病気ひとつしたことなかったんです>という言葉が心に刺さった。私も35年間、大きな怪我も病気もせず、生きてきた。
思わぬところから出てきた共通点に、私もついに自分のことを話しはじめた。

私:私も35年間大きな病気をしたことはなくって…今回はじめてで…

その男性は大きく頷きながら、「あの…ちょっと失礼なことかもしれないけど、何の病気…?」と聞きにくそうにしながらもズバリ尋ねてきた。

私は周りが聞き耳を立てているかもしれないな…とは思いつつも、「胃がんです」と答えた。
たった数分前に出会った人に、こんなデリケートな話は普通できないのだけれど、同じ先生に診てもらっているという仲間意識が働いたのかもしれない。

「ああ、そうですか。手術はこれから?」と男性はさらに尋ねてきた。

「いえ、1年半前にもうやっているんです。今は半年おきにCT検査をしていて…今日もその結果を聞きに来ていて、大丈夫だって言われたんです」と私は答えた。

以下、男性との会話が続く…

男性:手術は何時間くらいかかりましたか?

私:2時間弱と聞いています。

男性:私はね、9時間かかったんです。でも、手術の次の次の日から、歩けって看護師に言われてね。それが辛くて辛くて…

私:私も歩けって言われました。あれはきつかったです。

男性:しかも、私は手術の前に3ヶ月も入院してるんです。

私:3ヶ月!?

男性:肝臓を切除するから、切除する部分の肝臓の周りの血管を塞いで、別の部分にその機能を果たさせるようにするのに3ヶ月。長くて長くてね… 手術後も毎週、抗がん剤の点滴をするのにここの3階に通いました。(点滴の痕が残る腕を私に見せる)あなたも3階に行ってたの?

私:私は抗がん剤は飲み薬だったので、自宅だったんです。1年間飲みました。

男性:私は今日でちょうど5年の検査だったんです。さっき診てもらって、問題なしと太鼓判を押されました。今、70歳だけど本当に胆管がんと言われたときはここまで生きられると思わなかった。Y先生は手術が上手ですよ。悪いところは全部取ってくれる。だから、あなたも絶対大丈夫。

あなたも絶対大丈夫

ちょうどこのとき、看護師が予約票を取りに戻ってきた。
次回の予約は12月。クリスマスの直前だ。

私は荷物をまとめ、その男性にお礼を言った。
私は根拠のない大丈夫という言葉は気休めのようで大嫌いだが、その男性に絶対大丈夫と言われたのはとても嬉しかった。

がん患者同士が自分の経験を話し合って癒されるというのはこういう感覚なのかもしれない。
しかも、同じ先生に手術をしてもらっているという共通点がその思いを深くさせた。

「お互い元気に過ごしましょう」とその男性は言った。

私は「無事に5年間過ごされて良かったです。でも、5年って長いですよね…」と最後にひとつだけ弱音交じりで尋ねた。

「いや、そんなことないですよ。今まで通り、普通に過ごせばいいんです。そうすれば、あっという間。」

不思議な体験

会計を済ませ、病院を出ると、外は気持ちの良い風が吹いていた。
朝からの緊張で疲れ切ってしまった私は地下鉄の駅まで歩くのが億劫に感じたが、やはりなんともいえない解放感が私を包む。
心の中から不安が消えていた。

地下鉄に向かって歩いている間、先ほどの男性との出会いを思いだす。

― 外科医は十数人もいるような大きな病院で、100人近い人がうごめく待合室で偶然となりに座った男性と同じ先生にがんの手術を執刀してもらっていて、しかもその男性はちょうど術後5年の定期検査の結果を聞きに来たタイミングだった。-

術後5年間を無事に過ごす。
私が目指すべきところに今日ようやく到達できた男性。
そしてそこに向かって歩いている私を「あなたも絶対大丈夫」という言葉で背中を押してくれた。

私はスピリチュアルなことはほとんど信じないタイプだが、ただの偶然とは言い切れない不思議な縁を感じた。




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